2014年3月19日水曜日

台湾国会に学生ら100人以上が突入:大陸との経済提携に猛反発、「ほえほえくま~!」

_

●19日、台湾の立法院(国会)議場で座り込む学生ら:読売新聞


サーチナニュース 2014-03-19 16:28
http://news.searchina.net/id/1527356

台湾国会に学生ら100人以上が突入、大陸との経済提携に猛反発

 台湾の国会に相当する「立法院」に18日午後9時ごろ、学生ら100人以上が突入して議場を占拠した。
 馬英九政権が批准を目指す、大陸側とのサービス貿易協定を阻止しようとした。
 警察側は19日午前3時台と5時半台の2回に分けて強制排除した。
 占拠側が激しく抵抗したため、警察官4人が負傷して病院に搬送された。
 中国新聞社などが報じた。

  学生ら100人あまりが18日午後9時ごろ、守りを固めていた立法院のゲートを突破。
 建物内に突入し、議場のガラス扉を破壊して内部に侵入した。
 突入側はサービス貿易協定に反対する垂れ幕などを用意。
 さらに、ミネラルウオーターやパンやおにぎりなどの食料、寝袋も用意しており「長期戦」の構えを見せた。

  警察側は19日午前3時37分に第1派の強制排除作戦を開始。
 しかし、占拠側に押しかえされて失敗した。警察側は午前5時23分ごろ、再び強制排除に取り掛かった。
 しかし、抵抗が激しく、約1時間にわたって占拠側が設けた障害物を突破できなかった。

  ほぼ同じ時間帯に、立法院外に集結した新たな100人が院内突入を試みた。
 警官隊と激突したが、突入は阻止された。
 院内では占拠した人々はすべて排除されたが、激しい抵抗により警察官4人が負傷して病院に搬送された。
 占拠側にもけが人が出たが、重傷者はいなかったとみられる。

  馬英九事務室の李佳霏報道官は18日時点で
 「各方面が理性的に、温和に自らの意見を表明することを希望する」と表明。
 馬総統も同日、
 「立法院の国民党議員団の、サービス貿易協定に対する努力を感謝する。
 台湾は国際社会から孤立することはできない。
 野党には台湾にとっての罪人にならないよう希望する」
と述べた。

 同協定は台湾の世論を2分する、政治上の大きな争点の1つになっている。
 賛成派は、巨大市場である大陸との提携強化を重視し、台湾側の開放の度合いも世界貿易機関(WTO)の規則と同程度で、協定により負の影響がでる業種についても、良性の競争をもたらすと主張。
 反対派を「貿易保護主義」とする批判もある。
 反対派は、協定締結に至る過程に不明な点が多いことや、立法院における強引な勧め方を指摘。
 経済面では「恩恵を受けるのは大企業だけ」との指摘もある。
 さらに同協定は台湾側の印刷出版業を大陸資本に開放する内容が盛り込まれているので、「言論の自由が損なわれる」との主張もある。

  馬英九総統は同協定について2013年9月時点で「条文ごとに審議し、条文ごとに評決する。一括評決はしない」と表明。
 野党側との話し合いの結果だった。
  3月下旬になり「一括評決はしない」との前言をひるがえしたため、反対派が反発を強めた。国民党所属の張慶忠律法委員(議員)は17日、議場内で「法律にもとづき、審議は終了した」と宣言。
 馬英九政権側は「張慶忠議員の苦労に感謝する」と表明したため、反対派がさらに態度を強硬にした。  
 台湾最大野党の民進党は張議員の発言は認められないとして、一部参加者のハンガーストライキを含む、 「立法院120時間包囲」のデモを続けている。
 次の開会となる3月21日には「全民による立法院包囲」を実施する考えだ



(2014年3月19日21時58分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20140319-OYT1T00922.htm

台湾立法院、学生が占拠…中台貿易協定に反対

 【台北=比嘉清太】
  台湾の立法院(国会に相当)で18日夜、中台間でサービス分野の市場開放を進める「サービス貿易協定」(昨年6月調印)に反対する民間団体の学生ら数百人が、警官隊を突破して敷地内に突入、議場を占拠した。
  台湾の中央ラジオ局などによると、
 民衆による議場の占拠は初めてで、
支持率が低迷する馬英九(マーインジウ)総統にとって痛手となりそうだ。
 学生らは協定の撤回などを要求して占拠を続ける構えだ。

 同協定は中国側が金融や医療など80分野を、台湾側が運輸や美容など64分野を開放する内容。
 台湾側では中小企業へのダメージが大きいとの懸念が根強く、野党は反対し、立法院での承認手続きが大幅に遅れている。
 中国側は早期発効を求めており、手続きがさらに遅れれば、年内妥結を目指す別の中台経済協定の協議に影響する可能性がある。



CNN ニュース 2014.03.20 Thu posted at 11:23 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35045460.html?tag=top;topStories

台湾で学生らが立法院占拠 中国との貿易協定に反対


●台湾の立法院前に集まった学生ら

(CNN) 台湾の立法院(国会)が18日夜から19日にかけて、与党・国民党が推進する中国との貿易協定に反対する数百人の大学生らによって占拠された。

 議場内に入った学生らは入り口に椅子でバリケードを築いて立てこもっており、立法院の周辺には多くの支持者が集まっている。

 学生らが反対しているのは、昨年、中台が上海で調印したサービス貿易協定。
 中台間の投資や貿易を容易にするという内容だが、これには台湾経済への悪影響や、大陸との関係強化による台湾の民主制度の弱体化を懸念する声が上がっている。

 学生らは、協定の承認法案が審議される予定の21日まで占拠を続ける予定だという。

 台湾の国営通信社によれば、学生らが乱入したさいに制止しようとした警察官38人がけがをしたという。
 占拠側の4人が逮捕された。警察によれば、立法院の内外には2000人を超える学生や支持者がおり、警官も同数程度が配備されたという。

 対中関係は2008年に馬英九(マーインチウ)総統が就任して以降、改善が進んでいる。
 先月には初の閣僚級会談が行われ、中国の国営新華社通信によれば双方は定期的な対話を行うことで合意したという。



サーチナニュース 2014-03-23 11:20
http://news.searchina.net/id/1527595

ほえほえくま~!―日本人が「大陸との協定反対」を応援=台湾報道

 台湾では、馬英九政権が進めている中国大陸とのサービス貿易協定締結阻止を目指す学生らが18日夜から、立法院(国会議事堂)議場を占拠している。
 学生側を支持する日本人は、「ほえほえくま」というキャラクターを作り、インターネットに次々に掲載。
 自由新報、アップルデーリーなどの台湾メディアは
 「日本のネットユーザーが萌(もえ)でサービス貿易反対、ほえほえくま参上」
などと報じた。

 サービス貿易協定に反対する学生らが繰り返すスローガンの「退回服貿(トゥエイホェイ フーマオ=サービス貿易撤回)」が、日本人に「ほえほえくま」と聞こえたことから、学生側を支持する日本人が、「主張する熊」のイラストを作ったとされている。
 「台湾(中華民国)国旗を振る熊」、
 「スーパーマンのように、台湾国旗のデザインのマントを着用した熊」、
 「熊の着ぐるみの少女が日本と台湾国旗を持ち、『加油(がんばれ)』の文字を加えたイラスト」、
 「中国大陸を象徴すると見られるパンダを蹴(け)り倒す熊」
など、さまざまなイラストが公開された。

  台湾メディアは「ほえほえくま」の由来を解説し、「吼吼熊」などと翻訳して紹介。
 日本側の動きについて
 「絵の得意な日本のネットユーザーのグッドアイデア」、
 「多くのほえほえくまの図案を製作して台湾の公民運動を支持」、
 「多くの台湾のネットユーザーが、『日本は台湾の真の友だ』と表明している」
などと報じた。
 **********

 ◆解説◆ 
 中国大陸とのサービス貿易協定は、原発問題とならび台湾世論を2分する大問題だ。
 サービス貿易協定については、当初から賛否両論があり、激しい議論が戦わされてきた。 
 反対側が問題視するのは、協定の内容だけでなく、馬英九政権側の協定締結に向けた進め方の不透明さや強引さだ。
 具体的には、政権側は野党との話し合いにもとづき2013年9月時点で「条文ごとに審議し、条文ごとに評決する。
 一括評決はしない」と表明したが、14年3月になり「一括評決はしない」との前言を翻したなどがある。

  議場を占拠した学生側は議場内で取材に応じるなどで、
 「行政権が大きすぎ、三権分立の立法院による監督機能が効力を失った」、
 「国民党の議員が多く、多くの委員会で強制的に主導している」、
 「台湾の民主主義は国民党の強力なコントロールのもと、基本的に効力を失った」
などと主張。
 原発問題にも言及し(国民党は推進派)、サービス貿易協定など個別の問題だけでなく、国民党が民主主義を踏みにじったことがそもそもの問題点との考えを示した。
  馬英九政権については、多くの人が不満を持つ状態が続いている。
 2013年秋ごろから馬総統に対する支持率が10%に満たない状態だ。

 なお、中国語の標準語(普通話)では「退回」の発音が一般に、カナ表記では「トゥイフイ」に近い音になる。
 台湾の標準語である「国語(グオユー)」も、かつて官僚らが用いていた「北京官話」が起源であり、大陸側の「普通話」とおおむね同じ言葉だが、発音に古い特徴を比較的多く残しており、「退回」も「トゥエイホェイ」に近い音になることが多い。 








毎日新聞 2014年03月27日 22時19分
http://mainichi.jp/select/news/20140328k0000m030133000c.html

台湾:立法院占拠 学生側 「無期限占拠」を宣言

 【台北・鈴木玲子】台湾が中国と昨年調印した「サービス貿易協定」の承認に反対する学生が立法院(国会)議場を占拠している問題で、学生側は27日、協定撤回の意思を示していない馬英九政権の対応に「誠意がない」として議場の「無期限占拠」を宣言した。
  30日に総統府前や立法院周辺で大規模抗議集会を行うことも発表。学生や賛同する各種団体に結集を呼びかけた。

 学生側は25日、馬総統の対話の呼びかけに一時は応じる姿勢を見せたが、その後態度を硬化させた。
 対話の前提として中台で協定を結ぶ前に内容などを監督する機能の法制化などを求めている。






2014年3月11日火曜日

東日本大震災から3年、大災難に遭遇して知った台湾の好意と善意

_


サーチナニュース 2014-03-10 22:57
http://news.searchina.net/id/1526425

東日本大震災から3年、大災難に遭遇して知った台湾の好意と善意

 三陸沖を震源として巨大地震が発生、東日本大震災を引き起こしたのは2011年3月11日の午後2時46分だった。
 日本にとって極めて大きな災難だった。
 日本人の心は暗く沈んだ。
 しかしそんな中で、台湾が示してくれた絶大な好意は多くの日本人の心に「希望」の2文字をもたらしてくれた。

  当時の状況を振り返ってみよう。
   大津波が発生したこともあり、多くの人が命を失った。
 財産も失われた。
 地震にともない発生した福島第一原発の事故で、今なお故郷に帰れず、また行方不明の親族の捜索もかなわない人が多くいる。
 為政者が「想定外」を逃げ口上にするのは許されることではないが、多くの日本人にとって「想定外」の事態が発生したことは厳然たる事実だった。
  状況の推移は決して楽観できなかった。
 日本人の心は暗く沈んだ。

 しかしそのような中でも、人々を勇気づけてくれる明るい希望の光はあった。
 そのひとつが世界各地から寄せられたさまざまな支援だ。
  中でも多くの日本人を驚かせ、喜ばせてくれたのが台湾からの義捐金(ぎえんきん)の多さだ。
 もちろん、金額の多寡で単純に、感謝の気持ちに差をつけてよいわけではない。
 何らかの手を差し伸べてくれたこと自体がありがたいことだ。
 しかしそれにしても、台湾からの義捐金の多さに、多くの日本人が驚いた。
 もともと、親日的な雰囲気が濃厚ということは、比較的知られていた。
 しかしそれにしても、最終的に200億円を超え、世界最多になったことなどが伝えられると、多くの日本人が逆に
  「いったいどうしてそこまでしてくれるのか」と驚いた。

 義捐金や支援物資だけでなかった。
 台湾の馬英久総統は地震発生の11日、「日本側の要請があれば、ただちに派遣したい」として、救援隊をいつでも出動可能な状態にして待機させた。
 しかし、台湾の救援隊は丸2日間も待機させられることになった。
 後になり、
 「日本側当局が国交のない台湾の救助隊を現地に『一番乗り』させたのでは、政治的に差しさわりが出ると判断したらしい」
などと伝えられると、日本人の多くが、自国政府に対する怒りを感じた。
 そして、台湾や台湾人に対して申し訳ない気持ちになった。
 台湾との関連で日本人が違和感を感じたのはそれだけではない。
 2012年の大震災1周年の追悼式典で、台湾の代表は世界160カ国と国際機関の代表のために用意された席ではなく、企業代表などの席をあてがわれた。
 指名献花からもはずされた。
 やはり、多くの日本人が違和感と憤りを感じた。
 
  さまざまな状況を通じて、日本人の台湾に対する関心と好感度が高まった。
 そして、「なんとかして台湾の人々に、感謝の気持ちを伝えたい」との気運も高まった。
  その象徴的な例が、2013年3月8日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)予選第2ラウンドの日台戦だった。
 だれから指示されたわけでもない。
 東日本大震災時の台湾からの支援に対する感謝の気持ちをプラカードで示そうと考えた日本人ファンがいた。
 観客席のあちこちで「謝謝台湾(台湾、ありがとう)」などと書いたプラカードが掲げられた。  この日本人側の動きは台湾でも広く伝えられた。
 今度は、日本人が台湾に対する感謝の気持ちを示したことで、台湾でもインターネットで「感動した」といった書き込みが、次々に寄せられた。
 それだけではなかった。
 試合は日本が押されていた。3回に先取点を許し、9回表にようやく3:3と追いついた。
 そして延長10表に1点を追加し、4:3と逆転。
 10裏の台湾の攻撃を無得点に抑えてかろうじて逃げ切った。
   台湾球界は日本を「野球先進国」として尊敬してきたという。
 いや、そういう事情がなかったとしても、スポーツ選手として勝利を目前にして逆転負けしてしまったことは、悔しくてしかたなかったはずだ。
 落胆の気持ちは想像するにも余りある。
  しかし台湾チームは試合後、観客席に深々とお辞儀をして感謝と敬意を示してくれた。
 これには日本人が驚いた。
 日本人と台湾人が互いに相手を「尊敬できる人々、信頼できる人々」と強く思った瞬間だった。

  東日本大震災は日本、そして日本人にとって極めて大きな災難だった。
 失われた多くの命は、2度と取り戻すことができない。
 発生前の暮らしを、今なお取り戻せない人も多い。
 それでも、台湾の人々が日本に示してくれた好意と誠意は、多くの日本人を感動させてくれた。
  それにしても、多くの日本人にとって不思議だったのは、大震災に際して台湾人がどうしてそこまで、日本を助けようとしてくれたかということだった。

 そのことを端的に語ってくれたのが、台湾の李登輝元総統だ。
 直接の発端は1999年9月21日未明に発生した台湾中部大震災に対する日本の支援だった。
 日本の救助隊は外国からの救助隊としては最も早く、地震発生当日の夕方には台湾入りした。
 人数も145人と最大規模だった。
 李元総統によると
 「決して私たちは孤独ではない。日本をはじめとする国際社会からの関心と協力が、どれほど私たちの支えになったことだろうか」
と、当時を振り返った。
 ちなみに台湾中部大震災が発生したのは李元総統の在任時だった。
 李元総統は日本からの支援をただ「ありがたく受け取って」いただけではない。
  日本は国会議員の働きかけで、阪神淡路大震災時に使用した仮設住宅約1000棟を台湾に贈った。
 ただ、日本から贈られた仮設住宅は台湾側が別に用意した仮設住宅より小さく、見劣りがした。
 そこで李総統は「日本人の面子(メンツ)を傷つけてはならない」と考え、家電製品を手配して日本からの仮設住宅に配備した上で、被災者に供給した。
 台湾の被災者の日本に感謝する気持ちが減じないようにとの、心配りだった。
  1999年の台湾中部大震災、2011年の東日本大震災と、日本と台湾は共に自然からの大きな打撃を受けたが、相互に「人の善意の循環」を実現することになった。
   しかし李元総統は、自分のさまざまな配慮を鼻にかけるようなことは一切していない。
 それどころか、東日本大震災に対しての台湾の支援については「(日本に)少しは恩返しできただろうか」と、あくまでも謙虚に語った。




2014年3月10日月曜日

台湾で原発の是非が政局の焦点に、「建設強行」と馬英九批判も

_


サーチナニュース 2014-03-10 13:03
http://news.searchina.net/id/1526363

台湾で原発の是非が政局の焦点に、「建設強行」と馬英九批判も

 台湾では11月29日に、主要地方自治体7カ所の首長を決める統一地方選挙(七合一選挙)が実施されるが、台湾で4番目となる龍門原発(核四)の建設の是非が、政局の大きな焦点になる可能性が高まってきた。
 馬英九政権側が2013年3月に「8月を目途に住民投票を行う」と表明しながら、住民投票について言及しなくなったことで、「反原発」の動きにおいて「政権批判」の色彩が強まった。
 自由電子報などが報じた。

 台湾では1970年代に原子力発電所の3カ所建設が始まった。
 それぞれ核一、核二、核三(日本では第一原子力発電所などと呼ばれる場合も)と呼ばれる発電所は80年代半ばまでに商業発電を開始した。
 いずれも政権・政策批判が許されない国民党の独裁時代だった。
 台湾北部の新竹市の貢寮区での核四(第四原発)建設が最初に計画されたのは1966年だったが、中断や計画変更、反対運動の高まり、さらに建設中の事故などが続いた。

 馬英九政権は中華民国歴100年の2011年に「建国100周年行事」として運転開始を目指していたが、2010年3月に1号機中央制御室で大規模な火災が発生したなどで実現できなかった。
  反対運動の高まりには、1999年9月の茨城県東海村での臨界事故、02年の東京電力の原発損傷隠蔽発覚、11年の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所全面停止、さらに2011年3月11日の東日本大震災に起因する福島第一原発事故など、日本で発生した一連の問題や事故で、原発の安全性や原発をめぐる企業体質などについての不信感が高まったことも関係した。

  台湾・馬英九政権は2013年2月下旬、「核四」の建設について台湾全住民による住民投票で建設の是非を問う方針と表明した。
 2004年施行の「公民投票法」による民意の問い直しだ。
  ところが、馬英九政権は2013年8月に住民投票を実施する考えを表明したにもかかわらず、その後、住民投票について「音沙汰なし」になってしまった。
 このことも、原発反対派を大きく憤らせた。

  なお、2013年3月9日には、参加者10万人の「309全国廃核遊行(全国原発廃絶デモ)」が行われた。
 同デモでは女優のリン・チーリン(林志玲)さんらが呼びかけ、イーサン・ルアン(阮経天)さん、チャン・チェン(張震)さん、ティファニー・シュー(許ウェイニン)さん、伊能静さん、ニウ・チェンザー(鈕承澤)さん、ウー・ニエンジェン(呉念真)さんなど多くの有名芸能人が積極的に参加したことでも注目を集めた。(「ウェイ」は王へんに「韋」、「ニン」は「密」の「山」部分が「用」)
  また、観客動員数が世界最大とされる人気のバンド「Mayday(メイデイ、五月天)」が2013年に発表した映画「NOWHERE ノアの方舟」のストーリーを「『新エネルギー』施設の強引な建設が人類を破滅に導いた」としたことも、反原発のメッセージと見られている。
 同バンドでは特にマサ瑪莎さんが、反原発の立場を鮮明にして、デモにも参加している。
  台湾の「反原発」運動には、多くの芸能人が次々に賛意を表明するとの特徴がある。
 デモなどでは極めて強く意見を主張するが、総じては理性的に行動をしている。

 14年になってからも、3月8日に各地で反原発のデモが行わるなど、反原発の動きは衰えることがない。
 8日には雨が降った台北でも、各メディアによると反原発デモに5万人が参加した。
 ただし警察発表は2万人強だった。
  芸能人による反原発運動で中心的存在のひとりである柯一正さん(1946年生まれ)は8日に台北市内で実施したデモに際して馬英九総統を
 「ありがとう。あなたは私の活力のもとだ。
 私はもともと反原発であるだけだった。
 ところがあなたが(核四の建設を)強行しようとするものだから、私は反馬英九になった」
と批判した。

  他のデモ参加者からも、「この1年で政府には失望した」との声が聞かれた。
 馬英九政権の対応の悪さで、「反原発運動」が「反政権運動」の色彩を強めることになった。
  台湾では11月29日に、7地域の首長を決める「七合一選挙」が実施される。与党:国民党からは、「七合一選挙」まで馬政権は原発について「身をひそめる」との見方が出ている。
 「核四」についての住民投票問題は「触るとやけどをする不発弾」と化しており、最大野党の民進党が追及を始めた場合に、政権側にとっては極めて厳しい状況になるからという。
   なお、台湾では「原住民(先住民)が多く住む地域に原発を作っている」との非難が出ている。
 産業の発達が滞りがちな地域に対して電力会社などが利益を誘導して原発建設を進める構図だ。  台湾原住民とは中国大陸から漢人が来るはるか以前から台湾に住んでいた人々を指す。
 「先住民」の語は中国語で「前にはいたが、今はいない」とのニュアンスがあり、「原住民」が正式用語とされている。


 台湾で1970年代から80年代にかけて建設された原発、「核一」から「核三」までは、すべて米国製だった。
 「核四」は日立製作所、東芝、三菱重工業など日本からの「輸出原発」だ。
 そのため、日本でも台湾への原発輸出に反対する声が出た。
 台湾で賛成派と反対派が厳しく対立していることを理由に、原発輸出が「台湾の日本非難」を誘発するとの見方も出た。
  原子力発電所は軍事上、恰好の目標になりうる。交戦相手の原発をミサイル、航空機、その他のの手段で破壊すれば、通常兵器による攻撃であっても核兵器と同様、場合によってはそれ以上の被害を与えることができるからだ。

  台湾の対岸である福建省では、寧徳原発の1号機が2013年に運転を開始。
 同原発では最終的に6基を稼働させる計画で、さらに福州市福清でも原発が建設中だ。
  仮に中国が台湾に武力侵攻した場合、台湾にとって純粋に軍事的方法論としては、中国大陸の原爆を攻撃するという選択肢がありうる。
 国際的に極めて大きな非難を巻き起こすことは確実で、実際にはほとんどありえない可能性としても、中国としては考慮せねばならない問題だ。

 しかし台湾にすでに原発があることから、中国にとっては「台湾による原発攻撃」に対する報復手段が存在することになる。
 中国が台湾に近い福建省などに原発を建設しつつある背景には、
 「台湾の攻撃を心配する必要はほとんどない」
との判断が働いていると考えてよい。
  日本の場合も、原発は国防上の大きな弱点になりうる。
 反応ユニットをミサイル攻撃に耐えるように設計しても、水の供給ができなくなっただけで大事故につながることは、東日本大震災でも示された。
   ただし日本では、国家の安全保障を強調する政治勢力が原発の推進に積極的であるるなどの“ねじれ現象”が存在する。