2013年5月10日金曜日

台湾:尖閣諸島主権はわが国にある。「台湾は台湾、中国は中国」の思い

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サーチナニュース 2013/05/10(金) 13:41
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0510&f=politics_0510_006.shtml

台湾「東シナ海を平和の海に」、中国「主権なければ漁業権なし」

  9日付人民日報は尖閣諸島周辺での日台間の漁業取り決めが10日に発効することを受け、
 「主権がなければ、漁業権はどこから来るのか」
と同取り決めを批判する論説を発表した。

  台湾の馬英九総統は尖閣諸島の問題について2012年、
●.「主権はわが国にある」、
●.「ただし、対立行動をエスカレートしないよう自制」、
●.「国際法を順守し、平和的手段で争議を処理する」
などを骨子とする「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱。

  馬総統は同問題について、
●.「国際司法裁判所での審理にゆだねることも、方法のひとつ」
との考えを示している。
中国大陸側との“共闘”は、
 大陸側の対処方法が「攻める、攻める、攻めるとばかり」
であり、問題を
 「平和的に解決する道筋とは思えない」
との理由で否定した。

  台湾は日本との漁業権についての交渉と合意についても「東シナ海平和イニシアチブ」を自らの考え方の基盤として、領土問題をあえて口に出さず、関連海域において平和的な利用の仕組みを作ることで満足した。

  人民日報は日本と台湾が尖閣諸島周辺海域で漁業についての合意が成立した政治的環境について、
●.「台湾当局の指導者は、日本当局の努力を肯定し、日台関係は過去60年間で最も良好と評した」、
●.「日台双方で東シナ海を平和と協力の海にしたいとの希望を述べた」
と紹介。
 ただし、台湾内でも当局の姿勢は
●.「有識者から批判されている」
と主張。

  台湾の世論について人民日報は、
  「釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)の問題について、台湾の責任者は個人的に授受したり、小を得て大を失ってはならない。
  心中に漁業権のことだけがあり、主権の問題がない」
との認識だと紹介した。

  さらに、
 「主権がなければ、漁業権はどこから来るのかと、台湾側で深く考える動きが出た」
と論じ、台湾海上両岸の同胞が共同で釣魚島の主権を維持すべきであり、領土と主権を防衛する土台の上で、両岸の漁民が釣魚島近海の漁場での漁業収益を維持することは、両岸双方の責任と主張した。

  尖閣諸島を巡る緊張した局面は
●.「日本側が一手に作ったもの」、
●.「問題のカギは日本側が現実を正視し、実際の行動で自らの過ちを是正すること」
と決め付けた上で、
●.「釣魚島であれ、南シナ海の諸島であれ、台湾海峡両岸の同胞は中華民族全体の利益と根本利益を共同で維持すべきだ。
 民族の大義の前に、分岐点を超越して心を同じくして協力すべきだ」
と主張した。

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◆解説◆
  日本人からみて、尖閣諸島の問題が激化したのは、2010年9月に発生した「中国漁船衝突事件」だった。 
 中国国内で事件とは関係のない日本人が身柄を拘束されたことについては、ほとんどの日本人にとっては
 「文明国ではありえない事態」
としか思えなかった。

  石原慎太郎都知事(当時)が2012年4月に発表した「都による尖閣諸島購入構想」を多くの人が支持し、約半年で15億円近い寄付が集まったことも、10年の「漁船衝突事件」に衝撃を受けたことが、極めて大きな要因だったと考えてよいだろう。

  野田政権(当時)は尖閣諸島の「平穏かつ安定的な維持管理」を理由に12年9月11日までに、同諸島の魚釣島、北小島、南小島の国有化を行った。
  中国は石原都知事の「都による買い上げ構想」とその後の「日本政府による国有化」を「問題が激化した発端。
 すべては日本側の責任」と主張している。
 現在では、漁船衝突事件に触れることはほとんどない。

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  中国政府は台湾問題については一貫して
「台湾は中国の一部だ。
 祖国は統一されるべきだ。
 中国を代表する政府は中華人民共和国政府だ」
を、絶対に譲ることのできない「大原則」としている。

  台湾では言論や思想の自由が保障されているので、大陸との問題については「独立支持」、「統一指示」、「現状維持」など、考えの表明は幅が広い。
 現在のところ、さまざまな得失を考えた上での「現状維持派」が多いとされている。

  中国大陸側が台湾側に提案している「統一の条件」は、台湾にとっても“悪い話”ではないようにも見える。
 台湾に対しても香港と同様に「一国二制度」を適用するのでで社会システムの変更は免れ、大陸側との対立局面の心配もなくなり、交流の活性化で経済的にもさらに潤う可能性がある。

  多くの台湾人が中国大陸側の提案に「疑問符」をつけるのは、共産党政権に対する強い不信感があるとされる。
 共産党に対する不信感は台湾における教育などで増幅されている面もあるとはいえ、かつての「反右派闘争」などに見られる「約束の一方的な変更」や、現在も続く「厳しい言論統制」、対外関係でみられる「極端な排他的愛国心」などを目の当たりにするたびに、「信用できない」と思えてしまうという。

  台湾でもかつては国民党の独裁のもとで、厳しい言論弾圧などが行われていた。
 当局に反体制派と見なされれば、突然連行されそのまま行方不明になることも、珍しくなかったという。
 台湾の人の目に映る現在の中国大陸部の状況は、かつて台湾でもあった「恐怖の社会」と重なり合うとの指摘もある。

  さらに、中国大陸部出身者の「立ちふるまい」に接して、
 「自分たちとは異なる。
 同じ国とは思えない。
 台湾は台湾。
 中国は中国」
との思いを強くすることもあるという。





【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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